先王ハムレットについての考察など



ウワ‪〜〜〜〜!!まさか本当にハムレットの話をしてくれる人がいるとは。私は生の舞台を見たことは一度もなくて、演じたことがあるなんて羨ましい限りです。もう台詞覚えてきてるし好きすぎて私も演りたいかも(演劇の経験一切無いが)

先王はハムレットくんの理想そのもの。生前の在り方はひと言で言えば「典型的な父権的男性」だったはず。以下、ちょっと学者さんの論文を引用します。

"ハムレット王は、息子によって太陽神アポロ、偉大なジュピター、敵を威嚇し味方を指揮するマルス、知恵の神マーキュリーという神々に喩えられている。それはハムレット王が英雄、男のなかの男、父権制の長にふさわしい男であったことを裏づける。"──「ハムレットの母と恋人 ジェンダーの視点から」朱雀成子

あとヘラクレスにも例えられていますが、これも見事なまでに男性性を象徴する英雄ですね。また「(先王は)風が母上の顔に強く当たるのも許さなかった」というハムレットの言を信じるなら、先王夫妻は古典的な「権威ある父」と「庇護される母」の関係性であったと推測される。居室の場でガートルードに向けて「か弱い者ほど思い悩むものだ、言葉をかけてやれ」と言うのも庇護者的な態度を思わせます。

まさしく男性的で「立派な王だった」と言われるのにふさわしいが、一方でフェミニズム的な文脈から見れば、男尊女卑価値観の強いちょっと嫌な人かもしれません。いくらガートルードが再婚したからといって「女はみんな淫乱ビッチで信用ならん」と息子に言い聞かせるのはどうかと思うぞ。
ハムレットくんが女性不信になってうわあああ!!!!尼寺に行け!!!!したのは8割ぐらい先王の影響だと思います。


ところで、クローディアスの女性への眼差しは先王とはかなり異なる様子。

クローディアス:そして私には──それが私の強みか弱みかはともかく──妃はこの命と魂に堅く結びついている。星が軌道を離れては動けないように私も妃なしには生きてゆけない。(松岡訳)

「星が軌道を離れては動けないように」、すなわちクローディアスは妃を星の軌道になぞらえている。彼にとって妃はそのゆく道を照らし、導いてくれる光。先王の父権的価値観(おまえは俺の三歩後ろを歩いていろ)とは違い、ガートルードを自分の人生と意思決定に不可欠な存在だと思っていることが分かります。
先に挙げた朱雀先生は論文のなかで「ガートルードは先王と違って自分を対等に見てくれるところにグッときてクローディアスに落ちたのかもしれないよね〜」というようなことを言っており、これも面白い視点だと思いました。


彼が自ら語る言葉は少ないですが、個人的には先王自身、「俺の妃をクローディアスが寝取りやがった!おおガートルード、あんな奴に騙されて可哀想に!」の気持ちと、「裏切ったなガートルード!?純朴そうに見えておまえも所詮は情欲に惑わされる悪女だったということか!?」の気持ちを揺れ動いているように思われます。
彼はガートルードについて「誑かされただけ」という受動的な言い方と「自分から不義の床へ向かった」という能動的なニュアンスを両方使う。この揺れ幅がハムレットくんを更なる混乱に陥れているようですが、先王としてもまあそう簡単には割り切れないですよね。


ひとまず先王についてはそういうところでしょうか。ハムレットの話に付き合ってくれて本当に嬉しいです!分かってくれる人がいると思うだけで元気が出てくる。ありがとうございました……



というか関係ない話だけど、オベロンからフォローしてくれた人に「こいつ宗教とハムレットの話しかしんやん……何なんだ……」と思われてるんじゃねーかという不安が最近めちゃくちゃあるな。

 

水沢教会

マシュマロ回答コーナーと化している

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